新聞読み方講座
第4回見出しは10文字以内で

見出しを作るのは、記事を書いた取材記者ではありません。編集記者(編集者)が、つけています。取材記者が書いた原稿を、読者の立場で読み、取材した記者本人とは違う客観的な立場で「この原稿に書かれているニュースは、こういうことだ」と、分かりやすく要約するものです。
 見出しは10文字以内でつけるのが良いとされています。これ以上長くなると、一目見ただけで読み取ることが出来なくなるからです。ただ「10文字で世の中のいろいろな出来事を表現する」のは大変なことです。

高校野球時代のダルビッシュの記事
高校野球時代のダルビッシュの記事。
メジャーリーグのダルビッシュの記事
メジャーリーグのダルビッシュの記事。
見出し、写真のキャプションの表記の変化に注目。

例えば、いま大リーグで活躍しているダルビッシュ投手。新聞の見出しでは「ダル」と短縮して呼ばれます。
 ダルビッシュが高校生だったころ、甲子園大会で大活躍しました。そのころ僕は編集者として高校野球を担当していました。つらかったのは、ダルビッシュの見出し。プロ選手ではないので、呼び捨てはできません。 「ダルビッシュ投手」ときちんと表記しないといけません。すると、これだけで8文字も使ってしまいます。ダルビッシュが15奪三振で完封した試合があったとしても「ダルビッシュ投手完封」で、10文字。これでメイン見出しは制限字数いっぱい。
 今ならプロなので、呼び捨て可能だし、短縮してもOKです。見出しとしては「気迫ダル 15奪三振完封」などとできます。これで10文字。「気迫」とか「15奪三振」といった表現が入りました。状況がよく伝わります。
 このように見出しの主語は、できるだけ文字数が少ないほうが、他の要素を見出しに折り込むことができます。プロ野球の「ソフトバンク」を 「ソフト」と呼んだり、「タカ」「鷹」と短く表記するのもそのためです。

高知総局 外園

見出しには、ことわざをもじったり流行語や歌から言葉を拝借したり、いろいろな表現手法があります。編集記者は、雑誌やテレビ、映画などから気の利いた表現をメモしたりして、言葉を蓄えたり、勉強したりしています。
 また、「見出しには、見出しをつけた人の生き様が表れる」とも言われます。締め切り時間直前に手元に届いた原稿に、すぐに見出しをつけないといけないからです。僕の後輩の女性記者が言っていました。「締め切り前に飛び込んできたニュースの見出しがつかない。私の全人生が問われているような気になる。良い見出しがつかないまま締め切り時間になると、その日は家に帰ってからも悔しくて眠れませんでした」。その通りだと思います。僕も編集記者を長く担当しましたが、悔しくつらい思い出がいっぱいです。

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